冬がやってくるということは、並木藪の鴨南蛮を食べられるということを意味する。春になるということは、並木藪の鴨南蛮がもう次の冬まで食べられなくなるということを意味する。

だから私は今年も急いで並木藪へと駆け込んだ。

東京の名蕎麦店

東京は台東区・浅草、かの雷門からまっすぐ続く通りに店を構える「並木藪蕎麦(なみきやぶそば)」は、なんと大正2年(1913年)創業の蕎麦屋だ。もはや”浅草の名店”どころか”東京の名店”というに相応しいまでの歴史を誇る。

いつ行ってもちゃきちゃきとした店員さんが忙しく明るく動いている。

目当ては、冬季限定の“鴨南蛮”
¥2,000と、決してお手頃とは言えない一杯。しかし私はこれほどまでに美味しい鴨南蛮を、他のどこでも食べたことがない。

ふだんは相席が基本なほどに混み合っている店内も、ピークを外して訪問したとはいえ、コロナ禍でいくぶん落ち着いている。このご時世だから相席で通されることはなく(真昼間はわからない)、パーテーションで席が区切られている。

並木藪蕎麦がまた元の活気を取り戻す日には、浅草の街もふたたび人々で賑わうだろう。その日が惜しいようでいて(名店にスイスイ入れるから)、やっぱり待ち遠しい。

やってきました、
目にも美しい鴨南蛮

見よ、この厚切りの鴨肉を…
ロゼ色のこの見た目。視覚だけでも幸福感を感じるくらいだ。
写真に凝っている暇はない、さて、いただきます。

…なんて美味しいのだろう。

こんなにも厚みがあって歯ごたえまでもが楽しい鴨肉を、たっぷり贅沢にのせてくれる蕎麦屋さんはここの他にはない。
大ぶりな鴨肉はしっとりとしていて、噛めば噛むほど旨味がじゅわりと舌に溶け広がる。ねぎも、鴨つくねも、お汁も、お互いがお互いをサポートし合い、完璧なるハーモニーを奏でている。

味わいながらも、箸は止めない。
粋な江戸っ子は、ささっと食べて、ささっと立ち去る。それが江戸の蕎麦屋の流儀。

ざるそばのつゆは日本一辛いと有名な、並木藪蕎麦。しかし鴨南蛮のつゆはむしろまろみを感じるほどに、甘くて濃厚。一緒に出していただいた蕎麦湯で割って、最後の一口まで美味しく頂こう。ごちそうさまでした。

次は卵とじそば

冬の季節は鴨南蛮一択になってしまうのだが、ざるそばも、天ぷらそばも、老舗の名店らしい品格のある味を守り続けている。いつ来ても、ずっとずっと変わらないそのおいしさに、ホッとする。
調べているとジワジワ評判の高さを感じた「卵とじそば」が気になったので、次はそちらを注文してみようっと。

SHOP INFO
並木藪蕎麦

浅草・雷門の正面から続く大通り。
鴨南蛮は11月〜3月の限定と言われている。
営業時間11:00~19:30
定休:木曜
※情報は執筆時(2021/2)のもので、変更の可能性があります

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