だいぶ前、飯田橋ギンレイホールにて二本立てを鑑賞。

『リンドグレーン(英題:Becoming Astrid)』
『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/私の若草物語(原題:Little Women)

この二本立てはすごい。
どちらもヒロインは女性の作家。リンドグレーンは『長くつ下のピッピ』などの児童文学作品で有名。若草物語は、有名な四姉妹の物語だが今作では、作者自身がモデルである次女のジョーにスポットライトがあたる。

女性が人生で最も悩むこと、結婚・出産・育児、そして、仕事…
それらを現代に響くように鮮やかに描き出している二作品なのだ。

リンドグレーンは陰、若草物語は陽といった雰囲気があったが、どちらの映画も観賞後、芽吹きの春の爽やかな風に吹かれたような気持ちに。

『リンドグレーン』

(2018年/ペアネレ・フェシャー・クリスチャンセン監督)

童話作家アストリッド・リンドグレーンの伝記。
しかし童話を創作するための直接的な源、とか、明るい話は一切ない。

ABOUT MOVIE

アストリッドが少女時代に未婚の母となることを、写実的に抉り出し、そこから自立するまでの過程を描いたストーリーだ。
離婚調停中なのに娘の同級生であるアストリッドを妊娠させてしまう男は、いくら愛があろうと薄気味悪い。彼女が男に別れを切り出した際の「文無しになるぞ」「男がいないと生きられない」といった趣旨の発言で、観客がアストリッドを応援する理由が積み重ねられていく。


(C) NORDISK FILM PRODUCTION AB / AVANTI FILM AB. ALL RIGHTS RESERVED.

いくつかの最重要な決断、痛みを伴う出産のシーン、愛する子に見向きもされず世界がグレーに見える経験。その一つ一つが、まだ若い主人公をどんどん強くしていく。

シングルマザー家庭で育った私には、とても切実に、苦しく感じられる場面がいくつもあった。涙の止まらない場面も幾ばくか。私の母もきっと、厳しい選択の連続に耐えてきた強い女性なのだろうと。20歳くらいまでずっと反抗期だったけど、歳をとるごとに母の凄みと感謝と申し訳なさを噛み締める。


(C) NORDISK FILM PRODUCTION AB / AVANTI FILM AB. ALL RIGHTS RESERVED.

この映画は、性別による役割への境界線が薄くなってきた現代を生きる私に、前向きなメッセージを与えてくれた。結婚とは、出産とは、何なのか。どういう選択が自分の人生を満たすのか。
もっと真剣に女性としての生を考えて全うしていこうと、真面目な感想で締めくくりたい。

『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/私の若草物語』

(2019年/グレタ・ガーウィグ監督)

令和の美青年ティモシー・シャラメの御顔を拝みたく鑑賞した本作。

四人姉妹の人生を描いたアメリカの名古典「若草物語」を基に才気溢れる文才を持つ、次女のジョーを主人公に据えて物語は展開する。

ABOUT MOVIE

若草物語は、南北戦争時代の物語だから今とは女性の立場が全然違う。
「結婚が幸せのすべて」という価値観にまみれた空気感の中で、独身でいると心に決め「小説家になる夢」と「父が不在の家族」を背負い生きるジョーの姿には、現代の視点から見ても心が揺さぶられる。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』予告編より引用

ティモシー演じるローリーは、美青年という言葉の象徴であるかのようにスクリーンの中を燦然と輝き、これまでにない勢いで私をときめかせてくれた。貴族の着るようなお洋服が似合いすぎるよ。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』予告編より引用

フローレンス・ピュー演じる四姉妹の末っ子・エイミーは「うわ〜!末っ子だな~!」と何回もツッコみたくなるような奔放ぶりが逆に気持ちいい。低音ボイスでものをハッキリ言うところとか、動じないところとか、わがままだけではないどこかハンサムなところもチャーミング。
私は三姉妹の真ん中だが、一番奔放に生きてきたタイプなので、個人的にエイミーには感情移入というか共感した。フローレンス・ピューさんが一気に大好きになった。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』予告編より引用

あえて女性蔑視な時代の価値観もしっかり描いているからこそ、四姉妹のそれぞれの中にある芯の強さだったり気高い部分がくっきりと浮かび上がっていたように思う。メリル・ストリープ演じるマーチ叔母さまは典型的な古い価値観をズケズケと語るやもめの役なのだが、『プラダを着た悪魔』の編集長の時とはまた違った大女優の風格が満載で、これまた面白い。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』予告編より引用

エマ・ワトソンも出演していたり、セットも映像も豪華で目を楽しませてくれる作品だ。「最近観た映画でオススメは?」と聞かれたら、迷わずこの作品と答えるだろう。
グレタ・ガーウィグ監督の『レディ・バード』も名作と名高く、帰宅後すぐにウォッチリスト入りしたことは言うまでもない。

最後に

この二作品を組み合わせて二本立てにしたギンレイホールには拍手を送りたい。女性として、生きる希望と活力を大きくもらえ、この性を持って生まれついた人生について真剣に考える機会となった。それはまだ人生経験の浅い自分にとっては重要なことだった。

歴史あるミニシアター、ギンレイホールはこの世界情勢で運営が厳しくなっていると聞いた。今後も映画を楽しみに足を運び、応援させて頂きたい。

飯田橋ギンレイホール 公式サイト

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ふと思い出したこと

この映画、どちらにも主人公の散髪シーンがある。両者ともに長く伸ばした自慢の髪を切るという、主人公の決断を象徴する印象的なシーンだ。
私も最近髪を切ったのだが、作中で髪を切った彼女たちと同じように、女過ぎず、かといって男過ぎず、兎にも角にも強く生きたいから髪を切る、という気持ちが少なからずあった。短い髪に宿したこの決断を、大事にしようと思った。

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