とことん「理屈」という文字を煮詰めたような考え方をする人が好きだ。

無駄がなく、鮮やかで、シンプルで、それはもう美しい。
高校時代、数学の教師が、「この数式は美しい」とよく言っていた。それは複雑な証明がシンプルな数式に収まっていることを指していて、数学的に物事を考えることは、この複雑な世界をシンプルで普遍的に捉えることの役に立つと学んだものだった。

森博嗣『道なき未知』

森博嗣という作家は、その点で私をとても唸らせる作家だ。
『道なき未知』というエッセイ集がある。人生という複雑な未知の世界を、とことんシンプルに磨き上げた言葉で読ませてくれる。

森博嗣さんは作家である前に研究者であり、その経験から生まれる視点は美しいくらいに鮮やかだ。
もっとも、森さん自身が「研究者としての視点を人生に生かそう」と考えたのではなく、きっと自然とそうなったのだろう。

TODAY’S BOOKMARK

今日のBOOKMARKは、本書の帯にも採用されている文章「万能の秘訣を教えよう」から。

どんな場合にも、どんな悩みにも、あるいは、誰にでも通用するアドバイスはたった一つだけだ。それは、「やれば」である。やれば良いのだ。やるだけなのだ。ほかに道はない。いま直面していること、やりたくないこと、それをやれば良い。やる気なんか出す必要はない。いやいややれば良い。泣く泣くやれば良い。それだけのこと。やりさえすれば、それであっさりと解決し、だんだんやる気も出てくる。

森博嗣『道なき未知』28~30ページより引用 (KKベストセラーズ•2019年)

見失いかけたときは、シンプルに立ち返る

当たり前のことというのは、つまらない。
と、感じる人が大半だ。

当たり前なことは、やさしい。やさしすぎて、下に見てしまう。もっと上を見たくなる。けれど、上に行けば行くほど必要のない複雑さにがんじがらめになる。結局、当たり前というものがよかったのか、と、得心する日がくる。

複雑怪奇な迷路のゴールが、結局入口と同じであったかのような、そんな経験をなんども我々は繰り返すのだろう。
何かにぶち当たって、ごちゃごちゃ考えて、色々見てみて、狂ったようにわからなくなったとき、私はもう一度この本を紐解くだろう。シンプルな言葉で的確に表された世界を見て、新しい気づきを得るために。

本書はこの道なき未知の世界で迷子にならないための、方位磁針のようなエッセイ集であった。

追記

私は、森博嗣の生き方がとても素敵だと思う。稼ぐ時にしっかりとお金を稼ぎ、蓄え、そして森の中に城を築き、趣味の研究や遊びと、その合間合間に数時間の執筆をするのだという。(ティータイムの場所もよりどりみどりなほど広大な庭園の中には、人が乗れる鉄道を敷いているそうだ)常人には真似できないが、あまりにも愉しそうなものだ。

Author

Write A Comment

Pin It